COLUMN

2023.3.8

地方旅

南原の旅②1882年の朝日新聞に「春香伝」!

3月6日にオープンしたこのサイトですが、お褒めの言葉のほとんどが「デザイン」で、うれしいのはうれしいけども、中身もちゃんとしないと「箱だけ」になっちゃう。ということで、ちゃんと南原の旅の続きを書きます。

2月に訪れた南原は「春香伝」の舞台として知られる街で、最も有名なのが広寒楼(광한루、クァンハンル)。「春香伝」といえば、パンソリの演目の一つだが、繰り返し映画化されている韓国で最も有名なラブストーリー。私が初めて見たのはイム・グォンテク監督の「春香伝」(2000)だったが、それ以前にも何度も映画になっている。イム・グォンテク監督の「春香伝」ではモンリョン役をチョ・スンウが演じていた。これがチョ・スンウのデビュー作で、デビュー作からカンヌ国際映画祭のコンペティション部門で上映され、レッドカーペットを歩いた。

朝鮮時代、両班(ヤンバン)と呼ばれる上流階級の息子モンリョンと、妓生の娘、春香(チュニャン)の身分を超えた愛。2人が出会ったのが、広寒楼だった。モンリョンが都へ行っている間、春香は新たに赴任してきた悪代官に迫られるが、貞節を守り、怒った悪代官に投獄される。南原に戻ってきたモンリョンは春香を助け出し、2人はめでたく夫婦となって幸せに暮らすというお話。
韓国で人気の物語の典型と言われていて、いわゆるシンデレラ・ストリー。最近はだいぶ変わってきたが、少し前まで韓国ドラマは財閥御曹司と一般家庭の、あるいは貧しい女性主人公とのラブストーリーが多かった。
広寒楼は池のほとりに建っていて、私が行った2月は池の一部が凍っていた。寒かったけど、広々とした広寒楼苑という庭園になっていて、ゆっくり散策を楽しんだ。敷地内の「春香館」には「春香伝」にまつわる様々な展示があり、一番びっくりしたのは、「朝日新聞」だった。

なんと1882年の朝日新聞に「春香伝」が連載されていた。朝日新聞は1879年に創刊なので、創刊して間もない時期。どういう経緯で「春香伝」が連載されたんだろう…。今度調べてみます。

2023.2.11

地方旅

南原の旅①薩摩焼のルーツを訪ねて

全羅北道・南原(ナムウォン)に行って来た。韓国で最も有名なラブストーリー「春香伝」の舞台として知られる街だが、今回の目的は、薩摩焼のルーツを訪ねて「沈壽官陶芸展示館」に行くこと。残念ながら館内は写真撮影が禁止だった。

さて、知ってる人は知ってる話だが、鹿児島の薩摩焼を代表する沈壽官(ちんじゅかん/심수관)は、現在15代。もともとは朝鮮半島がルーツだ。豊臣秀吉の命による2度の朝鮮半島への侵攻、文禄・慶長の役。文禄の役が1592~1593年、慶長の役が1597~1598年。と、日本では言うようだけども、韓国では1592~98年を壬辰倭乱(임진왜란, イムジンウェラン)と言い、そのうちの97~98年を丁酉再乱(정유재란, チョンユジェラン)とも言う。ちょっとややこしい。

とにかく、慶長の役(丁酉再乱)の時に南原から連れてこられた陶工たちの中に、沈壽官の先祖、沈当吉がいた。という縁で、南原に「沈壽官陶芸展示館」があると知り、訪ねてみた。

沈壽官については、おそらく司馬遼太郎の『故郷忘じがたく候』で知ったという人が多いと思う。私もたぶんそうなんだけど、今年1月、日本帰国中にたまたま日本橋高島屋で「薩摩焼十五代沈壽官展」をやっていて、十五代のギャラリートークもあるというので、聴きに行った。

今ちょうど沈壽官にまつわるドキュメンタリー映画を日本で撮っていて、ギャラリートークにも監督はじめ撮影チームが来ていた。その関係者から、南原にも展示館があるというのを聞いた。

「沈壽官陶芸展示館」は、春香テーマパークの中にあった。春香伝とは関係ないんだけども、南原に行って分かったのは、南原はどこもかしこも春香〇〇というネーミングだらけ。

展示館の玄関には十四代沈壽官の胸像があった。館内にはたくさんの歴代沈壽官による薩摩焼が展示されていて、薩摩焼の歴史年表など詳しい説明、映像も。それによれば、薩摩焼が世界的に知られるきっかけとなったのは1867年のパリ万博だったそう。幕末から明治へという時期を考えれば、薩摩藩だったというのも、大きかったんだろうな。

私はまだ鹿児島の沈壽官窯には行ったことがなく、今年は行こうと思ってる。館内に展示されてる写真の中には、盧武鉉大統領(当時)と小泉純一郎首相(当時)が十五代沈壽官と共に撮った写真もあった。写真説明は沈壽官窯に訪れた時の写真となってたけど、調べると、たぶん2004年の鹿児島で開かれた日韓首脳会談の時、茶会に十五代も同席して一緒に撮った写真みたい。盧武鉉大統領は沈壽官窯を訪れてるけど、いくら調べても小泉首相と一緒に訪ねたというのは出てこないから、展示館の写真説明が間違ってる。こういうのちゃんとしてくれないと困るな。

私が中高生の時には「豊臣秀吉の朝鮮出兵」と習った気がするけど、それも数行だったかな。でも、韓国に来てみると、壬辰倭乱はすごい存在感で、そもそも光化門のど真ん中に李舜臣(イ・スンシン)将軍(文禄・慶長の役で朝鮮水軍を率いた将軍)の像があるほど、歴史的ヒーローだ。今回、沈壽官をきっかけに壬辰倭乱についても学び直そうと思います。